オンライン授業とn:nの想定外の学びの時間

多摩美の授業開始から2週間経った。
オンライン授業のいいところと弱いところを忘備録的にメモしてみる。

オンライン授業のいいところ

■Slackで出席
出席取るときに、好きな音楽、漫画、もし旅をするなら。いろいろな質問をして、その回答を出席とする。ただの返事やカードリーダーの記録よりも学生の個性がわかる時間になって出席が楽しい◎ 名前を呼んで答える時間ってなんか苦手だったので今後も使いたい。

■ファッションがわからない
カメラオフにすると何を着てるのかさっぱりわからない。なのでなんの先入観もなく声やメッセージを読み取ることができるような気がする。見えないことでキャラが分からず不安…という考えもあるかもだけど、表層的な情報のカットで生まれるコミュニケーションもありそう。

■授業設計の精度が上がる
長い時間をオンラインでだらだら過ごすと、データ量も認知資源も消費してしまう。なので限られた素材の中で伝えたいメッセージを厳選する癖がつく。余白が生まれにくいともいえるが、今まで無駄と気がつかず余白と言うことにしてた実は無駄なものが断捨離される感覚があった

■質問がしやすい
今まで疑問があっても、授業後に直接聞けないと手段はメールしかなかったので、きっと「改まってメールするほどじゃぁないよな。。」と感じていわなかったことを気軽にやり取りする空間が生まれつつある。聞きたいけどリアル空間では実は聞けなかったことって山ほどありそう。

■プロセスが残る
教室ではなく、Slackをベースキャンプとすると、そこでそれぞれが動く様子や、相談内容のやり取りが、文字や図解で残りやすい。今までリアルに撒き散らしてきたデザインを学習する時の体験の情報。全然残し切れてなかったけど、工夫次第で溜められることの可能性を感じた。

■誰でも平等に1アカウント
オンラインのUIは、先生だからという理由で、特別画面が大きくなったり、文字が大きくなったりしない。誰でも同じ1アカウントがフラットに割り当てらる。リアル空間の中に無意識的にあった立場の違いの権威性のような空気が融けてなくなる感覚は私は心地よかった。

 

オンライン授業の弱いところ

「授業」という意味では、工夫次第で1:nで時空を超えた体験を作れる感じがしてる。ただ「学校」という視点だと課題はまだある。学生同士の予期せぬ交流や出会いが、未来のキャリアに繋がったりするはずなんだけど、オンラインの居場所はまだまだ不安定。先生不在で生まれる体験は何で作れるのか?

授業と授業の隙間の体験を繋ぎ合わせて統合するのがリアル空間キャンパスの役割なのかもしれない。授業単位でオンライン体験が成り立った後に、学校視点での体験をどう捉えて再定義していくか?各大学で方向性が分かれていきそう。

 

オンライン授業のありうる方向性

A■体系化された知を質の高い映像でオンデマンドで全力配信
B■未知のテーマに対して実験するプロセスと発表の場を提供に特化
C■個々の目的を応援するコーチング&コミュニティに注力
D■個性的な先生を横断的に集めて広く浅く自分の興味で学べるプラットフォーム運営
E■A〜D全部

全国で、それぞれの学校が、全部の体験をオンラインで構築してるから大変なのかもしれない。みんなで共有できる部分は共有して、各学校の個性として残る部分は残していくなと出来たらすごくハッピー。ただこれは週末にどうにかなる問題ではなく、10年くらいかけていく話な気もしてる。

今まで長年なぞってきた学びのカタチが長期的にゆっくり大きく変わるタイミングになりそう。 変化に対して、10年後も教員の立場かもしれない大人の視点ではなく、今が大事な学生の視点に立ちつつ、今!必要な体験を作っていきたい。

n×nの体験のため色々試してるけど、先生オーガナイズではたぶん足りない。部室での会話とか、昼休み友達の友達と知り合う瞬間とか、飲み会の帰りに非常階段で話し込んでたら朝になってカップラーメン食べて解散したりとか、そういう一見意味なさそうで先生には言わないけど自分にとって重要な瞬間。

授業以外の先生が知らないところで起きる学びを支えてたのは「場所」 どのタイミングで学校に「場所」が解放されるかわからないけど、どちらにせよ、しばらく距離を取って使わなくてはいけないので、今までの「場所」とは違う特性を持つことになるはず。「場所」に頼ってた関わり合いをとこで行うか?

■いつ元どおりに「場所」を使えるようになるか?
+
■「今までの場所」で行ってた関わり合いを、どうやって「これからの場所」やオンラインを組み合わせて維持するか?
or
■今までの関わりあいに固執せず、新しい関わり合いをどのように構築するか?

授業の単位で磨き込みをかけるのは、個人の努力とテクノロジーのパワーで如何様にも出来そうだけど、学校という場所で起きる関わり合いをどう考えるのか?もしも学校が関わり合いを放棄してしまったら、関わり合いを求めて、オンラインサロンに人が流れていくシナリオも増える気がしてる。

オンラインサロンは、価値を保証する名称でも何でもなくて、集まりのジャンル名。何が起きるかはサロンオーナー次第なので、若い人が入るときは100%信じ過ぎないで、何を価値としてるか見極める批評的態度が必須かもしれない。

授業と授業の隙間の体験を繋ぎ合わせて統合するのがリアル空間キャンパスの役割。授業単位でオンライン体験が成り立った後に、学校視点での体験をどう捉えて再定義していくか?各大学で方向性が分かれていきそう。

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About The Author
           

清水淳子 | shimizu junko

1986生まれ。2009年 多摩美術大学情報デザイン学科卒業後 デザイナーに。2013年Tokyo Graphic Recorderとして活動開始。2019年、東京藝術大学デザイン科修士課程修了。現在、多摩美術大学情報デザイン学科専任講師として、多様な人々が集まる場で既存の境界線を再定義できる状態 “Reborder”を研究中。著書に「Graphic-Recorder-―議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書」がある。 twitter@4mimimizuでも日々色々と発信してます。

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