UXのX( experience )を感じる力について

グラフィックデザイナーが、良いグラフィックを沢山見た方が良いのと同じに、UXデザイナーも、良いUXを沢山体験した方がよいのだろうな。と思うけど、良いUXは本にもなってないし、博物館も、データベースも無いので、自分で収集するしかない。それが難しく面白いところなのかもしれない。

「良いUX」っていうと、なぜか「良いプロダクトやアプリやサービス」、または「リッチなホテルやレストランに行くこと」など。誰かが作った完成品のUXを味わうことになりがち。でも私は、それだけでは無いような気がしてる。

例えば、初対面の人と心が触れ合ったと感じる瞬間、一人で過ごす夕暮れの空気、頭が空っぽになるくらい圧倒的な自然、好きな人と濃密な言葉を交わす時間。そういう、まだカタチになっていない、ふとした瞬間に訪れる最高の時間こそ最高の教材なんじゃないかな。

また『良いUX』だけではなく、ヒリヒリするような(悲しい/悔しい/恥ずかしい)、イライラして苦しい(葛藤/矛盾/理不尽)。そういうドロドロの瞬間の時間も超重要な資料だと思う。

そんな感じで、人間としてカラダ、ココロ、アタマ、全部混ぜて、ぐしゃぐしゃになるような体験をしまくることは超重要だと思う。

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また、その対極で、ガートナーのハイプ・サイクルに載ってるような最新のテクノロジーの概念を知ること、仕組みをブラックボックスのままにせず学ぶこともきっと重要。

そしたら、生身の体験をどこまでテクノロジーで、パターン化できるのか?、どの体験は増幅してもいいのか?、増幅しすぎるとヤバい部分はどこなのか?、などなど、体験のデザインとテクノロジーのベストな関係を見極められるようになるかもしれない。原始的なフィジカルな体験と超最先端のテクノロジー、その淵を行ったり来たりできるときっとよい。

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体を使う体験を知らないで、体験をテクノロジー化していくことは、情緒の劣化※ を招くことになるかもしれないと思うことがある。しかも誰も劣化したことに気がつかないかもしれない怖い未来もあり得る。(※ 情緒の劣化、ということを考えることが、100年後の人類にとっては「老害」な考え方なのかもしれないが … ひとまず素直な気持ちはこう思ってる。このことについては、複雑すぎるので、また今度書きたい。)

あと下記の記事。ポスト人間中心時代の理性によるデザイン =『「C」のデザイン』。もしも、この世界になった時に、人間の世界を感じる感性のあり方はどうなるのか?これも個人的に気になるところだ。(複雑すぎるので、これも、また今度書きたい。)

最近、UXデザインのやり方が一通り定式化されつつあるけど、根源の基本の力となるはずの、X( experience )を感じる感性の育て方/鍛え方/あり方について語る人は少ない。むしろ「エモい」で片付けてしまうシーンが多い。けど、ここの部分、私は今超気になってる。一番大事な力だとおもう。

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そういう意味で、私は、まずは自然に行くことは一番のUXの教科書だな、と感じてる。5感を研ぎ澄まして歩くこと、自分の力でどうにもならないことと対話すること。区切りのない空間と時間に身を委ねること。普段、都会の中で色々な道具にサポートしてもらってる体と自然のインターフェイスを直に感じること。全部、最高の素材だ。

日々、鬼忙しいが、UXのX( experience )を感じる瞬間を大事にして行きたいな。

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清水淳子 | shimizu junko

1986生まれ。2009年 多摩美術大学情報デザイン学科卒業後 デザイナーに。2013年Tokyo Graphic Recorderとして活動開始。2019年、東京藝術大学デザイン科修士課程修了。現在、多摩美術大学情報デザイン学科専任講師として、多様な人々が集まる場で既存の境界線を再定義できる状態 “Reborder”を研究中。著書に「Graphic-Recorder-―議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書」がある。 twitter@4mimimizuでも日々色々と発信してます。

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