ずいぶん昔の話になりますが、今から7年前、2010年4月17日に横浜アリーナでのLADY GAGA来日公演「MONSTER BALL」に行ってきました。立ち見で一番遠い席だったのですが、いつもYouTubeでしか見た事の無い大好きなGAGAの生声、生空気に触れるってだけでもう大興奮でした。
(※一緒に行ってくれたイラストレーター松崎りえこ氏のイベントレポが素晴らしすぎるので、GAGA好きな人は、こちらも是非見て欲しいhttp://jinbutsugiga.seesaa.net/article/146975027.html)
ところで、本題ですが、ミームという言葉をご存知でしょうか。私はうああ哲学辞典という漫画で知ったのですが、『動物行動学者ドーキンスが提唱する、文化を形成する様々な情報であり、人々の間で心から心へと伝達や複製をされる情報の基本単位を表す概念である。』とのことです。
『ドーキンスは、ミームを脳から脳へと伝わる文化の単位としており、例としてメロディやキャッチフレーズ、服の流行、橋の作り方などをあげている。』
つまり、今ある肉体が親から受け継いでいる遺伝子でできてるのと同様に、
自分の知識や思考も誰かから受け継いだミームでできてる、ということになります。
7年前、世界中に広がったLADY GAGAのミームは非常に強烈だった。それはたぶんGAGA自身が沢山の種類のミームを吸収してて、さらに濃密で強い記号的なミームに変換しているからなんだろうと思う。またGAGAは自分のファンのことを「リトルモンスター」と呼ぶ。この呼び方は、GAGAのモンスター的なミームを受け取った証のように感じてとても好き。7年前、私もリトルモンスターとして、GAGAの素晴らしきミームいただいたよ、ありがとう。
なんていうか、面白いのが、自分の遺伝子は選べないけど、ミームは違うんだよね。きっかけさえあれば、好きな人のを好きなだけ選んで吸収できる。そして集めたミームを、好きな方法で好きな形に変換して出力できる。そして運が良ければ世界中に広まって、時代を超えて複製してもらえる。
例えば、ファッションデザイナーのココシャネルは遺伝子というか、子供を産んで残すことはしていない。だけど、彼女が1910〜20年代に当たり前だった窮屈なコルセットで締め付ける女性服に対して作り上げた、着飾るためではなく生きていくための服「シャネル」というミームは時代を超えて世界中のクリエイターの中に生きている。そして今日も誰かが「シャネル」のミームを材料のひとつとして、新しいミームを作り続けている。
全力で生きてミームだけを残す生き方、人類の進歩に欠かせないし、かっこいい生き方だと私は思う。子供を持つ人生、持たない人生と二極化して語られがちだけど、人間が次世代に残せるものは遺伝子だけじゃないよな。と、私はGAGAやココシャネルの生き方を見て思うのでした。
参考図書 / 利己的な遺伝子 <増補新装版> リチャード・ドーキンス
うああ哲学辞典は本当におすすめ。文字が苦手な人でも、短時間で、広くいろいろな哲学者や思考が学べます。フッサールの「エポケー」、サルトルの「嘔吐」、デカルトの「我思う、故に我在り」、特に、このあたりのキーワード、学校の授業じゃわからなかったことが、少しわかって興味持てました。
About The Author
清水淳子 | shimizu junko
デザインリサーチャー / 情報環境×視覚言語の研究 / 2009年 多摩美術大学情報デザイン学科卒業後 デザイナーに。2013年Tokyo Graphic Recorderとして活動開始。2019年、東京藝術大学デザイン科修士課程修了。現在、多摩美術大学情報デザイン学科専任講師として、多様な人々が集まる場で既存の境界線を再定義できる状態 “Reborder”を研究中。著書に「Graphic-Recorder-―議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書」がある。 twitter@4mimimizuでも日々色々と発信してます。